日常生活の大半が日本語の1言語で済んでしまう日本と異なり、台湾では日常的に複数の言語に接しています。そのため、日本人からすると台湾で使用される言語は少し複雑に感じるかもしれません。ここに、その概要をまとめました。
國語
台湾で話される中国語は、台湾では國語と呼ばれ、台湾で最も使われている言語です。中国で話される標準中国語「普通話」と違いはあるものの、意思疎通を行うことが可能です。
以下、台湾で話される中国語を國語、中国で話される中国語を普通話を記載します。
國語話者の割合とその地域
台湾政府が2021年に行った調査結果によると、台湾住居者のうち國語を第一言語とする割合は66.3%、第二言語とする割合は30.5%でした。國語は特に台湾北部で話されており、台湾北部に限ると実に80%の台湾住居者が國語を第一言語です。
普通話との違い
旧字体を使う
普通話と最も違うのは、日本で言う「旧字体」を使うことです。元々、中国、台湾、日本は全て旧字体を使っていましたが、中国と日本の政府がそれぞれ独自に漢字を簡略化しました。台湾では文字の簡略化が行われずに現在に至っています。
ちなみに、中国では簡略化する前の漢字、つまり台湾で使われている漢字を「繁体字」と呼びます。台湾でも同様に「繁體字」と呼ばれることがあります。しかし、台湾で使われる漢字こそ歴史的に正しいものだという認識があるため「正體字」と呼ばれることもあります。
台湾独自の発音記号を用いる
中国で漢字の読みは拼音と呼ばれるアルファベットを用いた発音記号を用いて表します。
一方で、台湾は注音と呼ばれる発音記号を使用します。日本では子供向けの文章にふりがなを使うことがありますが、台湾ではこの注音を使います。
台湾で最も一般的な文字入力方法は、この注音を用いて行う方法です。日本のローマ字入力に近く、発音を記号で入力するとその発音に該当する漢字一覧が表示されるので、適切な漢字を選択するという入力方法です。
四音の発音が明確ではない
中国語では発音に加えて、トーンの上り下がりがあり、これを四音と言います。同じ発音でも四音が違うと意味が全く違ってくるので、中国語では非常に重要な概念です。
國語では、普通語と比べて四音がはっきり発音されないため、台湾人と中国人が会話した時、中国人が台湾人の発音を聞き取れないことがあるそうです。
舌を丸めた発音がされない
日本人は英語のRとLの発音を苦手としています。日本語にRの発音が無いからです。台湾語も、舌を丸めたRの発音がありません。そのため、台湾人も舌を丸めた発音は苦手です。
一方で中国語には舌を丸めて発音する英語のRに違い音があります。例えば、数字の「二」がそうで、普通話では英語の「R」と似た発音となりますが、台湾では舌を丸めずに「アー」と発音する方も多いです。
台湾語からの語彙
台湾では、國語と台湾語のバイリンガルが人口の大半を占めます。そのため、國語は台湾語から影響を受けた言葉が多数存在します。
面白い例が、青果店でパイナップルをお店の人に切ってもらうことを「他殺」、自分で切ることを「自殺」と言うことがあります。これは普通話にはない表現です。この表現の由来は台湾語で、台湾語ではパイナップルを切ることを、パイナップルを殺すといい、その影響で他の人(店の人)に切ってもらう(殺してもらう)から「他殺」、自分で切る(殺す)から「自殺」ということです。
台湾人の妻によると「自殺」とか「他殺」はちょっとしたおふざけ表現で、パイナップルを購入するたびに「自殺」「他殺」と言っているわけでは無いそうです。
語尾に「ね」や「よ」が付くことがある
謝謝よ
小さな薬局でお買いもをしたとき、店員さんから「謝謝よ」と言われました。「謝謝」は「ありがとう」だけど、語尾の「よ」は一体何なのでしょうか?
台湾人の妻に「謝謝よ」の「よ」は一体何なのか聞いてみました。その結果「台湾独自の言い方で、意味は変わらないけど、よりフレンドリーな感じなる」と回答をいただきました。それって、日本語の「よ」と同じじゃないですか。つまり「謝謝よ」は「ありがとうよ」という感じのようです。
舒服ね
当時新生児だった息子を、お風呂に入れてくれた看護師さんが発言した一言です。息子がお風呂であまりにも気持ちよさそうにしているので、息子に向かって「舒服ね」と声をかけました。「舒服」は中国語で「気持ちいい」という意味なので、「舒服ね」は「気持ちいいね」という感じです。
語尾に「ね」や「よ」を付与する話し方は、発音もニュアンスも日本語に近いです。しかし、日本語由来なのかどうかは調べてみましたがはっきりしませんでした。台湾は、日本語教育が行われ、その後に中国語教育が行われた歴史があるため、國語に日本語の名残があっても不思議はありません。
「的」の代わりに「の」を使う
國語・普通話を問わず、中国語では「的」が日本語の「の」と同じ文法上の機能があります。例えば中国語で「我的衣服」は「私の衣服」という意味です。
國語では、「的」の略字として日本語の「の」を用いることがあります。正式な文書では使われないものの、「の」は割と市民権を得ているようで、店舗名等でも「の」を用いたものを見かけます。妻が言うには、学生の頃に「の」を使って楽をしてノートを取っていたと話していたことから、かなり一般的に使われているようです。
台湾語
福建省のから移住してきたとされる閩南人が話す閩南語の台湾方言です。福建省の閩南語と比べ、台湾語は日本語からの外来語が多いなどの違いがあります。
台湾語の話者とその地域
台湾政府が2021年に行った調査結果によると、台湾住居者のうち台湾語を第一言語とする人の割合は31.7%で、第二言語とする人の割合は54.3%でした。台湾語を公の場で使用することが禁じられた歴史があります。特に台湾北部では監視の目が厳しかったため、現在でもその名残で北部では台湾語の話者が少なく南部では話者が多いです。
書き言葉がほとんど使われない
台湾語を表す書き言葉は何種類か公安されてはいるが、一般的な台湾人ではそれを使うことはあまり無いようです。
私の妻は、台湾語の標準語と言われている高雄の出身で、台湾語が第一言語です。高雄では日常的に台湾語が話されています。幼少の頃から家族で台湾語を話しており、最初に覚えた言語が台湾語です。その後、小学校で國語を習ったそうです。台湾人の中でも台湾語ができる方ですが、インターネット上に存在する台湾語の書き言葉を見せてみると、「そんなものは誰も使っていない」一蹴されてしまいました。
台湾語は地元の言語
台湾語は、良くも悪くも「地元の言語」として認識されています。地元の言葉なので、外国人に対しては台湾語を積極的に使うことはありません。相手が外国人とわかると、國語や英語で話そうとします。相手が日本人なら、日本語で話してくれることもあります。
台湾語は台湾独自の言葉なので、政治家が愛国心を表現するために、台湾語で演説することもあります。
台湾でしか通用しないことから、台湾語をあまり高く評価しない人も多いです。台湾語よりも台湾外でも通じる國語を習うべきという意見もあります。
台湾国内で方言がある
日本語の方言と同じように、台湾語にも地域による方言が存在します。台湾語話者なら、方言を聞くとどの地域の出身かおおむねわかるようです。
台湾の現在の首都は台北ですが、台湾語に関しては台湾南部での話者が多いため、台湾南部での中心的な都市「高雄」が台湾語の標準語とされています。
現在は学校で教えられる台湾語
台湾語が公共の場で禁止された歴史もあることから、台湾語の話者が現象傾向にあったため、この言語を残そうと現在では台湾の学校で台湾語が教えられるそうです。
客家語
台湾では閩南人に次いで人口が多い客家人によって主に話される言語です。客家人は中国の広東省から移住してきたとされ、台湾の外に住む客家人も客家語を話します。
日本語
日本語は英語と人気を二分する人気の外国語
台湾の本屋さんで外国語コーナーを見てみると、英語の本が約半分、日本語の本が約半分、その他外国がほんの少しというラインナップでした。日本語はこんなに人気なのかと驚きましたが、日本語の本のラインナップ中に「腐女子的日語」(腐女子の日本語)という本もあって、こんな本の需要もあるのかとさらに驚きました。
街中でも日本語教室の看板を良く見かけます。
日本料理店では日本語であいさつ
台湾では、日本でもおなじみの丸亀製麺や、一蘭、らあめん花月嵐などが出店しています。日本では見かけない、台湾で生まれた日本料理店もあります。そんな日本料理店に足を運ぶと「いらっしゃいませ」、帰るときは「ありがとうございました」と日本語で挨拶してくれます。店によっては「2名様ご来店です。」まで日本語で言います。
これ、私が日本人だから日本語で話してくれている訳ではなく、現地人に対してもこの対応をしています。普段から複数の言語に接しているので、台湾人の外国語に対する適応能力は本当にすごいなぁと思います。日本ではちょっと無理ですよね。日本でマクドナルドに行って、店員さんが英語を話して来たら私は戸惑うと思います。
英語
マクドナルドは英語もOK
台湾のマクドナルドは英語が通じるという妻の情報を信じ、台湾のマクドナルドで英語を使って注文したことがあります。
対応してくれた店員さんに英語が通じず、別の店員さんに対応してもらったこともありますが、おおむね英語が通じます。日本料理では日本語を話すノリで、アメリカンなマクドナルドは英語もOKということでしょうか。台湾人の外国語適応能力すごすぎです。
医師は英語が話せる
台湾の医師は、英語の論文を読む必要があるので英語が話せます。私は町医者と歯医者にかかったことがありますが、どちらも普通に英語で普通に話せました。
公共の言語は國語、台湾語、客家語
電車の駅名アナウンスや、テレビでの選挙のお知らせ等、公共性の高いものは國語、台湾語、客家語の3言語でお知らせがあります。
まとめ
台湾では、現地語として國語、台湾語、客家語が主に話されており、日本語、英語も一定の話者がいます。台湾人の言語能力はすごいですね。
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